前夜から、どうにも眠りが浅かった。
原因は一つ、尿意だ。
何度もトイレに行くが、スッキリせず、気持ちよく眠れない。
その夜も21時にはベッドに入ったが、眠気は訪れず、iPadでネットサーフィンに勤しみ気を紛らわす。
23時、まだ眠れないまま、
尿意をなんとかしようとストレッチをしてみた。
その時、ふと左の背中に違和感を感じた。
最初は単なる筋肉痛だと思ったが、次第にその感覚は鈍く、じわじわと痛みへと変わっていく。
何かが違う。
いつもの筋肉痛とは違う何かが体内で動いているような気がした。
午前0時を回った頃、その鈍い痛みは脇腹にまで広がり、吐き気まで伴ってきた。
ここまで来ると、ただの違和感では済まされない。
体の中で何かが起こっている。
普通ではない不安がじわじわと膨らみ、妻を起こし、救急診療に行くべきか相談した。
近くの病院に電話をかけ、症状を説明すると、返ってきた答えは冷たい。
「専門医はいないので、検査はできません。痛み止めくらいしか出せませんよ。」
その言葉が耳に残る中、倦怠感が急に増す。
もう無理だと判断した私は、妻に病院まで送ってもらうことにした。
小さな息子を置いていくわけにはいかず、彼を起こして一緒に連れて行った。
普段なら機嫌を悪くするはずの息子が、今夜に限っては違った。
私の異常を察したのか、文句を言わずに準備を済ませ、3人で病院へ向かう。
病院に着くと、「3時間待ち」と掲示された看板が目に飛び込んできた。
その瞬間、軽い絶望が胸を覆ったが、中に入ると待っている人は4組ほど。
希望が一筋、差し込んだ。
朦朧とした意識の中で受付を済ませ、体重測定や血圧を測るが、特に異常はないという。
午前1時30分頃、熱を測りながら問診を受けた。
その時、お医者さんの目が何かを察知したように輝いた。
「尿管結石かもしれませんね」。
まるで謎解きをする探偵のように、的確に症状を指摘された。
診察室に入り、エコー検査を受ける。
痛みは続き、倦怠感も限界に達していた。
全身が何か重い力で押しつぶされるかのようだった。
痛み止めを処方され、ベンチに戻ると、ようやく眠気が訪れ、朦朧とした意識の中でウトウトし始めた。
気がつけば、すでに午前3時を回っていた。
痛みも和らぎ、少しほっとしたところで、若い女性医師が診察結果を告げた。
「尿管結石です。腎臓が腫れているので注意が必要です。」
その言葉は予想外ではなかったものの、次に続く言葉が心に重くのしかかった。
「石が出るまでは、再び痛みが襲ってくる可能性があります。」
尿管結石──その名前は聞いたことがあったが、実際に自分が経験するとは思わなかった。
人生で最も痛いと言われるその症状に、私はこれからどう立ち向かうのか。
恐怖が胸を締め付ける中、ネットで原因を調べる。
シュウ酸やプリン体、そして
「コーヒー」
背筋が寒くなる。
私は1日1リットルものコーヒーを飲んでいた。
それが原因かもしれない。
コーヒー、紅茶、チョコレート、ピーナッツバター──大好きなものたちが、突然の裏切り者に変わったような気がした。
当分の間、彼らを断つ決心をするが、胸の中に残る不安は消えない。
今もなお、尿意は私をじわじわと苦しめ続けている。
この痛みの結末は、まだ見えないまま。